プロジェクト概要
「広島大学原爆放射線医科学研究所 被爆者スライド標本データベース」
概要
このデータベースは、広島大学原爆放射線医科学研究所(原医研)が「原爆被爆者の記録を後世へ:標本データベース化プロジェクト」の一環として作成した2つのデータベースのうちの1つで、原医研が所有する被爆者のスライド標本を最新の技術によりデジタル化し、一般公開用に作成したものです。
このデータベースには、被爆後早期に亡くなられた各被爆者に対する代表的なスライド標本画像と医学記録などの解説、個人情報を除いた性別や年齢、被爆状況などの情報が収載されており、年齢、被爆距離(爆心地からの距離)、被爆場所などの条件から検索および閲覧ができるようにしています。被爆者の具体的な資料に接していただくことで、多くの方々に原爆の影響や被爆の実態を伝えることを目的としています。
背景と対象
原爆投下直後から行われた医療や調査研究により得られた、貴重な被爆者の記録や標本などは、戦後まもなくアメリカに持ち去られました。AFIP(米軍病理学研究所)に保管されていたこれらの資料は、1973 年にようやく日本に返却され、広島の原爆に関する資料は現在原医研に保管されています。
今回のプロジェクトではこの「AFIP 返還資料」のうち、1973 年に原医研が発行した「原爆被災学術資料に関する報告」における「被爆初期の病理解剖例一覧表」に掲載された 135 名を対象とし、1 名あたり 0~15 枚、合計 632 枚のスライド標本を 専用のスキャナによりデジタル化いたしました。
この画像データは、「AFIP 返還資料」の英文記録から得られた情報、病理専門医である株式会社病理センター代表の井内康輝先生(医学博士、広島大学名誉教授)による所見やコメントとともに、医療従事者向けの医用画像管理・共有システム「LOOKREC」に登録し、一般公開用とは別のデータベースとしてクラウド上に保管しています。こちらのデータベースは、研究目的に限り所定の手続きで閲覧できるよう現在準備中です。ご関心のある方は、お問い合わせください。
本データベースは、クラウド上に保管された詳細な情報の一部を抜粋し、特徴的な画像を添えて一般公開用にわかりやすく編集したものです。井内先生に「AFIP 返還資料」の英文記録から、あるいは直接標本を見ることによりつけていただいた詳しいコメントをもとに、原医研附属被ばく資料調査解析部の杉原清香(医学博士)が作成しました。
ご利用上の注意
- 被爆場所は、当時の記録からおおよその位置を推定してマップ上に表示しています。また、そのほかの情報も、アメリカ側で英語に翻訳して作成された記録をもとに作成していますので、正確さに欠ける可能性があることをご承知おきください。
- 本データベースのテキストおよび画像を含むすべてのコンテンツの著作権は、原医研が有します。データのご利用は非営利目的に限らせていただき、その引用等にあたってはコンテンツの著作権が原医研にあることを明記してください。
データ解説について
- 詳細ページの「被爆状況」「症状の経過」「当時の記録からわかること」の記載内容は、「AFIP返還資料」の英文記録をもとにしています。
- 「病理組織標本からわかること」の記載内容は、井内康輝先生に、実際にスライド標本を見て、あるいはスライド標本が残っていない場合には「AFIP返還資料」を参考に、つけていただいた詳細な所見をもとに杉原が作成しました。
- 「まとめ」の記載内容は、これらの情報から原爆が与えた人体影響等についてどのように考えられるかについて、井内先生による解説を踏まえ杉原の見解を述べたものです。
- 医学記録については、一般の方に向けてなるべくわかりやすい解説を心掛けましたが、難しい部分も多いかと思います。専門用語の解説や正常な組織との比較など、今後も説明を追加してゆく予定です。
謝辞
本データベースの作成には、クラウドファンディング「原爆被爆者の記録を後世へ:標本データベース化プロジェクト」で得られた資金を用いました。
ご支援いただきました皆様に厚く感謝いたしますとともに、クラウドファンディングの実施に際し、ご支援者に対する御礼としての講演会やパンフレットの監修などにご協力をいただきました広島大学名誉教授、鎌田七男先生に心より御礼申し上げます。
ごなお、本データベースの公開にあたり、井内康輝先生には病理学の専門家としてのご助言ご指導、正常画像の提供など多大なるご尽力をいただきました。ここに深謝の意を表します。