No.A099
年齢 | 19 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/02 |
剖検年月日 | 1945/09/04 |
被爆距離 | 1100 m |
被爆時地名 | 水主町(警察練習所) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
警察官でした。
2階建ての木造家屋の1階で、窓から2m離れて座っていました。
建物倒壊により下敷きになりましたが大きなけがはありませんでした。
症状の経過
被爆当日にはきけがあり、全身のだるさと食欲不振もありました。
8月23日から1日2~4回の水様の下痢が生じ、8月27日に西条の傷痍軍人広島療養所に入院しました。
8月28日から死亡するまで40℃を超える高熱が続きました。
8月28日の血液検査では、白血球数は920/μlと著しく減少していましたが、9月1日には白血球数450/μlとさらに減少していました。
当時の記録からわかること
体格はよく、栄養状態は良好でした。点状出血が両大腿部に少数みられました。
右肺の胸膜に少数の点状出血が見られました。右肺はうっ血していました。左肺上葉には出血が見られました。
肝臓の表面に点状出血が見られました。肝臓はかなり高度にうっ血していました。
胃は軽度拡張し、粘膜はうっ血していました。
右の尿管には血液の塊がありました。左腎の実質内に、粟粒大の小さな出血が見られました。
舌は灰白色物質で被われ、その中心には小さな出血がありました。喉頭蓋はむくんでいました。
病理組織標本からわかること
肝臓には小葉中心性の軽度の肝細胞萎縮とうっ血が見られます。
精巣の精細管内はセルトリ細胞が大半を占め、精子は少数です。
リンパ節の濾胞は小型ですが、リンパ球は多く見られます。リンパ洞には急性うっ血が見られます。
腎臓の間質には急性うっ血が見られますが、遠位尿細管に尿円柱の形成はありません。
扁桃腺の広範囲に凝固壊死が認められます。
まとめ
骨髄には全体に造血細胞が少なく、巨核球も少数ですが、これは放射線の影響と思われます。一部に細胞密度の高い部分もあり、未熟な細胞が主体です。この細胞密度の高い部分は骨髄の再生を示しますが、血液中の血球が回復するまでには至っていないと考えられます。
脾臓やリンパ節ではリンパ球産生の低下がみられ、精巣での精子低形成とともに放射線の影響と思われます。
肺には限局性に出血を伴う急性気管支肺炎を認めます。
この、急性気管支肺炎が直接的な死因になったと思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24