No.A096
年齢 | 13 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/08/12 |
剖検年月日 | 1945/08/12 |
被爆距離 | 1500 m |
被爆時地名 | 宝町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外で立っているときに被爆しました。白いシャツを着ていました。
症状の経過
似島の臨時病院入院当初は意識は比較的明瞭でした。食欲不振、睡眠障害、 はきけ、嘔吐、下痢がありました。
数日後、興奮状態となり、その後、意識不明となりました。
当時の記録からわかること
顔、後頭部、頚部、両肩甲部、上肢にI度のやけどがみられました。結膜は蒼白でした。顔面の皮膚にはかさぶたができていました。皮膚には黄疸や点状出血はありませんでした。
肺は両肺とも大きさや形状は正常でした。胸膜の後面に多くの点状出血が見られました。
リンパ節には少量の炭粉沈着が認められました。
心臓後面の血管周囲に多数の小さな出血が見られました。
胃には内容物がほとんどなく、潰瘍や出血もありませんでした。2匹の回虫が小腸内にみられました。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺には限局性に無気肺が見られました。
卵巣で多数の一次卵胞がみられましたが、発達卵胞はみられず、黄体もありませんでした。
長管骨の骨髄は完全に脂肪に置き換わっており、造血の所見は認められませんでした。
やけど部位の表皮ははがれていました。硝子化した結合組織に細胞はなく、細菌の塊が壊死組織内にみられました。皮下組織内の小血管のいくつかは、小型の血栓を含んでいました。
まとめ
組織標本は残っていないため、当時の記録から推測しました。
骨髄では、高度な造血組織の萎縮がみられ、脾臓やリンパ節でもリンパ組織の萎縮がみられました。これは放射線の影響とみなされます。造血機能の低下によりおそらく血小板が減少していたであろうことが、胸膜や心臓後面の出血からうかがえます。
その他、卵巣での卵胞の成熟障害があり、これも放射線の影響である可能性があります。
部分的な無気肺や肝の小葉中心性変性は死亡直前の変化と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31