No.A092
年齢 | 16 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/13 |
剖検年月日 | 1945/09/14 |
被爆距離 | 500 m |
被爆時地名 | 下中町(広島中央電話局) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
座った状態で被爆しました。短い袖のブラウスとモンペを着ていました。
顔に裂傷を負いましたが、働き続けました。
症状の経過
9月1日までは症状はありませんでした。
9月2日脱毛が始まりました。
9月4日の夕方から全身倦怠感があり、翌9月5日に発熱と下痢、喉の痛みが出現しました。
9月11日には点状出血も見られました。
当時の記録からわかること
皮膚に少数の点状出血がありました。
左肺の上葉は、肺気腫状でした。
脾臓の濾胞は不明瞭でした。肝臓は軽度の腫れがありました。
腸管には散在性にうっ血が認められました。うっ血は盲腸にも見られました。
腎臓の表面には点状出血が散在していました。
舌は灰白色の物質で覆われていました。
病理組織標本からわかること
扁桃腺は壊死しています。急性の炎症は見られません。
腎臓の髄質では上皮細胞の剥脱が高度に見られます。
リンパ節のリンパ濾胞は萎縮しています。
皮膚では毛嚢が委縮しています。
まとめ
骨髄の組織標本は残っていないため確認できませんが、皮膚などの点状出血や扁桃腺の壊死からは、放射線による造血組織の減少があると思われます。
リンパ節におけるリンパ球産生の減少(リンパ濾胞の萎縮)や、甲状腺濾胞の萎縮も放射線の影響と思われます。
肺では急性うっ血水腫の所見がみられ、急激な循環不全の状態が示唆されます。
腸管では死後変化がつよく、感染や潰瘍の有無などを判断できません。
標本からはっきりと死因を特定することはできませんが、発熱などから感染症の可能性が考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24