No.A090
年齢 | 45 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/30 |
剖検年月日 | 1945/08/30 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
中国第104部隊の軍人でした。
屋内にいたか、屋外にいたかについての記録はありません。
外傷はありませんでしたが、両下肢にやけどを負いました。
症状の経過
8月25日、広範囲に点状出血が出現しました。
8月29日に宇品陸軍病院に入院、この時著しい脱毛がありました。
8月29日に4?5回の水様で血性の下痢がありました。
当時の記録からわかること
両下肢にかさぶたで被われたやけどがあり、右下肢の病変には手のひら大の潰瘍がありました。
左の肺は出血性、浮腫性で、通常より硬めでした。
小腸の粘膜は薄く、多数の小出血が見られました。空腸には5匹、回腸には2匹の回虫がいました。直腸には小さな出血と比較的浅い潰瘍がありました。
両側の咽頭と扁桃腺は壊死していました。壊死性出血性の気管の炎症が見られました。
大腿骨の骨髄は、上半分は赤色髄で、下半分は脂肪髄でした。
病理組織標本からわかること
腎臓では糸球体の硬化と、腎盂腎炎が認められます。
脾臓ではリンパ濾胞が萎縮しており、リンパ球は減少しています。
まとめ
骨髄の標本は残っていないので確認できませんが、造血組織の高度な萎縮があり、巨核球の減少、有核赤血球の形態の異常などが記録にあり、これは放射線の影響と思われます。
脾臓とリンパ節の所見も放射線の影響と考えられます。
肺の気管支肺炎、咽頭から気管にかけての急性炎症にも好中球の反応は乏しく、感染しやすい状態であったと推測されます。
直接の死因としては、肺の気管支肺炎及び口腔内から気管にかけての急性炎症が大きく関与したと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31