No.A009
年齢 | 32 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/11 |
剖検年月日 | 1945/08/12 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 国泰寺町(広島市役所裏) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
市役所裏の屋外で作業中に被爆しました。上半身は裸で爆心地に背を向けて立っていました。熱を感じてすぐに地面に倒れました。
後頭部、両肩部、顔面にII度のやけどを負い、似島に搬送されました。
症状の経過
はきけや嘔吐はありませんでした。下痢がありました。のどの渇き、食欲不振がみられました。38℃から40℃の発熱が死亡時まで続きました。
当時の記録からわかること
皮膚は蒼白で貧血性であり、点状出血がみられました。
腸間膜や肺門部のリンパ節は萎縮性し、通常より小さめでした。
左胸腔には癒着がありましたが、胸水は認められませんでした。胸膜や心外膜に点状出血が見られました。
腎臓の粘膜にはいくつかの点状出血が見られました。
右の扁桃腺は膿を含んでいましたが、腫れてはいませんでした。
病理組織標本からわかること
腎臓の近位尿細管・遠位尿細管は内腔が拡張しています。
脾臓では濾胞の小型化が見られ、類洞の内皮が腫大し、類洞が拡張しています。
扁桃腺の一部に上皮の壊死が認められます。
まとめ
骨髄の標本がないので断定的ではありませんが、骨髄において、放射線の影響と思われる造血組織の萎縮があると推測されます。その根拠としては、胸膜などで点状出血を認め、出血傾向があること、また、扁桃線の急性炎症部に成熟白血球の浸潤を欠くこと、があげられます。
脾臓や扁桃腺でもリンパ球は少ないことから、放射線によるリンパ組織の萎縮があると思われます。
胃や腸管粘膜へのリンパ球浸潤の増加や肝の門脈域でのリンパ球浸潤は慢性期の変化と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31