No.A089
年齢 | 29 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/31 |
剖検年月日 | 1945/08/31 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 水主町(中島国民学校) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
軍人でした。
大木の陰で被爆したためやけどはありませんでした。爆風によって近くの川に投げ出されましたが、負傷はしませんでした。
症状の経過
被爆後よりはきけが3日間ありました。
8月19日に脱毛が始まりました。8月24日に頭痛がありました。8月26日、出血を伴う歯肉炎を発症しました。
8月28日の体温は39.3℃を示し、その後も高熱が続きました。
8月31日に急激な上腹部痛、嘔吐があり、その日のうちに死亡しました。
8月28日の血液検査では、赤血球が246万/μlと低値、白血球は200/μlと著しい低値でした。
当時の記録からわかること
背中を除く皮膚には多数の点状出血が見られました。頭髪にはほぼ全体に脱毛がみられました。
約300mlの血性腹水がたまっていました。左側の腹膜は出血で隆起していました。空腸につながる腸間膜には出血がありました。
胃では広範囲に、粘膜に小さな点状出血が見られました。盲腸は暗赤色で、近くの腸管と癒着していました。盲腸の粘膜は厚く、円形に壊死し、腫れていました。大腸には暗赤色の出血がみられ、その中心には潰瘍ができていました。
左の扁桃腺には潰瘍ができていました。
病理組織標本からわかること
胃の粘膜固有層に強い細胞浸潤があります。粘膜下層には出血があります。
腎臓の近位及び遠位尿細管腔は軽度拡張しています。
脾臓ではリンパ球が減少しています。
まとめ
骨髄では造血組織の萎縮がつよく、特に巨核球と赤血球の産生はほとんどみられません。このため皮膚や胸腹膜での点状出血がみられ、また、左扁桃腺の潰瘍性変化などは好中球減少の影響と思われます。
脾臓やリンパ節では、軽度のリンパ組織の萎縮がみられます。これら造血組織やリンパ組織の萎縮は、放射線による影響と考えます。
急激な腹痛後に死亡したという経過、壊死性の潰瘍、血性腹水が認められることなどから腸穿孔が疑われ、これが死亡につながったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/09/29