No.A086
年齢 | 63 歳 |
---|---|
性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/11 |
剖検年月日 | 1945/09/12 |
被爆距離 | 1400 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で被爆しました。
家の倒壊で全身、とくに顔を打撲し、手足には裂傷を負いました。
症状の経過
最初の2週間は特に症状はなく、裂傷は次第によくなりました。
8月15日から食欲不振があり、8月23日には日に10回の血性の下痢を認めました。
9月9日には下痢は米のとぎ汁様となり、回数も減りました。
8月25日には40℃の発熱があり、のどの痛み、歯肉出血がありました。熱は死亡日まで続きました。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良で、皮膚は蒼白でした。点状出血や歯肉出血は認められませんでした。外傷ややけどはなく、脱毛ははっきりしませんでした。
両肺の下葉に、クルミ大の境界のはっきりとした暗赤色領域がみられました。
脾臓の濾胞や隔壁は明瞭でした。大動脈の内側には石灰化した部分が多数ありました。
十二指腸と小腸には軽度のうっ血と浮腫がありました。大腸では、表層のびらんと、より深い、境界のはっきりとしたソラマメ大の壊死巣が散在していました。
病理組織標本からわかること
心臓では心筋細胞の核の大小とリポフスチンの沈着が目立ちます。
気管では上皮の剥脱と残存する上皮の小型化が見られます。
大腸の粘膜には小さな膿瘍が数多くみられます。
リンパ節では皮質のリンパ濾胞は小型化しています。
髄索の幅は広く、細胞が増加しています。
まとめ
大腸粘膜では多数の小膿瘍の形成がみられ、血性下痢の原因と思われます。
両肺の急性うっ血は死亡直前の変化であり、大動脈の硬化は加齢による変化と考えます。慢性甲状腺炎は被爆前からあった病変と思われます。
大腸の膿瘍とそれによる下痢、出血が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24