No.A085
年齢 | 21 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/09 |
剖検年月日 | 1945/09/09 |
被爆距離 | 500 m |
被爆時地名 | 基町(西練兵場) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
路上に立っている時に被爆、背中側から爆風に襲われ、倒れました。
意識が戻った時、帽子がなくなっており、コートの右半分は焼けて体が露出していました。
症状の経過
3日間軍病院で治療され、8月29日に大阪の病院へ転院しました。全身状態は悪く、顔は真っ白でした。帽子で被われていなかった部分の頭髪はすっかり抜けていました。
8月30日の血液検査では、赤血球は511万/μlでしたが、白血球は500/μlと著明に減少していました。
9月6日、水のような下痢が出現しました。
9月9日、呼吸困難が増強し、亡くなりました。この日の赤血球数は218万/μlと減少しており、白血球は7500/μlに回復していました。
当時の記録からわかること
やけどが左胸、左肩、左上腕、左手背、頚部、頭部の左側と後面にみられました。治って瘢痕となっている部分もありましたが、一部は潰瘍となっていました。著しい脱毛がありました。
肺には硬い結節が触れました。粘稠な膿の入った結節もあり、一部は出血性でした。
脾臓はうっ血しており、リンパ濾胞はみえませんでした。いくつかの梗塞が認められました。
胃粘膜には4x6cm大の出血巣が見られました。
腎臓は腫脹し、小さな梗塞が少数みられました。
病理組織標本からわかること
心外膜に軽度の出血が認められます。
肝臓には軽度の小葉中心性変性が認められます。
精巣では精細管からの精子形成がみられません。
脾臓ではリンパ濾胞は消失しており、形質細胞が増殖しています。
まとめ
両肺には高度な化膿性気管支肺炎がみられ、空洞の形成も伴います。
骨髄では骨髄球系細胞の増殖がみられ、炎症巣にも成熟した白血球を多くみることから、骨髄は放射線の影響からは回復していると推測されます。その割に赤血球が少なく、貧血が疑われるのは胃などからの出血が影響していたのかもしれません。
左腎には梗塞がみられ、肝の小葉中心性変性などから、菌血症とそれによる急性循環不全があったことが示唆されます。
直接死因としては、両側の肺炎による呼吸不全の可能性が高いと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31