No.A084
年齢 | 24 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/01 |
剖検年月日 | 1945/09/01 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
軍人でした。
屋内で被爆し、頭と腰に挫傷を負いました。
症状の経過
8月27日、舌の潰瘍を伴った口内炎に気がつきました。食欲不振と下痢もみられました。体温は39.5℃でした。以後も39~40℃の高熱が続きました。
8月29日、全身の点状出血が生じ、顔がむくんできました。舌の潰瘍は徐々に拡がり、8月31日には舌全体を被うほどでした。
当時の記録からわかること
顔に紫斑がみられました。著しい脱毛があり、右後頭部には長さ約2cmの傷がありました。右腕には潰瘍ができていました。
左肺の肺尖部近くには2つの乾酪結節があり、その下に空洞がありました。その他中心の壊死した多数の円形の出血巣が見られました。
胃には潰瘍はありませんでしたが、円形の出血巣がみられました。点状出血もありました。
大腿部、右鼠径部のリンパ節は腫大していました。
病理組織標本からわかること
残っている標本は脳のみであり、大きな異常は認められません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺には壊死組織からなる2つの結節が存在し、その内部にはラングハンス型巨細胞をまれに含む類上皮細胞が見られました。
気管支上皮の一部にも乾酪壊死がみられ、大型の肺血管の内膜にも一カ所、小さな結核結節が認められました。
リンパ節では成熟したリンパ球は消失していました。
骨髄は脂肪細胞が主体で、赤血球の産生は乏しく、成熟した顆粒球も少なく巨核球はまれでした。
まとめ
骨髄では、巨核球、骨髄球、赤芽球のいずれもその産生は著しく阻害されています。これらは放射線の影響と考えられます。巨核球の減少、血小板の減少による点状出血が、全身皮膚などに広く認められます。また口内炎や舌の潰瘍などの変化は免疫力低下状態にあったことを示唆します。
さらに、左肺上葉には、空洞形成を伴う活動性結核症を認めますが、これも免疫力低下による陳旧性結核の再燃の可能性が高いと考えます。この、左肺の活動性結核と、それによると思われる肺のうっ血水腫が直接の死因と考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31