No.A081
年齢 | 38 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/16 |
剖検年月日 | 1945/08/16 |
被爆距離 | 300 m |
被爆時地名 | 大手町(広島銀行集会所) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
海軍の軍人でした。
海軍の事務所として使われていた広島銀行集会所(コンクリート造)で被爆しました。
症状の経過
岩国海軍病院に入院時、顔、胸部、背中にI度のやけどがありました。水様の下痢がありましたが、食欲は良好でした。
徐々に顎に硬直がみられ、話すことができなくなりました。呼吸困難も生じ、8月15日に精神錯乱状態となり、翌日死亡しました。
当時の記録からわかること
肺動静脈には多数の空気の泡が見られました。大動脈にも泡状の血液がみられました。
肺には高度のうっ血が見られました。左肺の下半分、右肺には癒着がありました。右肺の上下葉には出血が見られました。
肝臓には少数の点状出血と径約2cm大の2つの出血巣がみられました。
胃粘膜には点状出血が見られました。回腸では点状出血が散在し、出血で囲まれた小さな潰瘍がありました。これらの出血や潰瘍は、上行結腸でも見られました。S状結腸では出血で囲まれた大型の潰瘍が見られました。
病理組織標本からわかること
標本は残っておらず、当時の記録にも組織所見の記載はありませんでした。
まとめ
標本がないので確認はできませんが、骨髄には顕著な造血細胞の減少があると思われます。それによる胃粘膜などの点状出血がみられ、また、易感染状態による小腸、大腸の出血を伴う潰瘍性変化が認められます。これらは放射線の影響と思われます。
右肺では限局性に出血性病変があり、出血性気管支肺炎と思われます。周囲には急性うっ血水腫をともなっていると考えられます。
右肺の出血性気管支肺炎と両肺の急性うっ血水腫が直接的な死因と考えます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31