No.A080
年齢 | 22 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/02 |
剖検年月日 | 1945/09/02 |
被爆距離 | 不明 |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
記録が残っていません
症状の経過
記録が残っていません
当時の記録からわかること
頭髪は脱毛が顕著でした。全身に出血斑が散在していました。両耳の近くに5㎜大の浅い潰瘍が4個あり、血の塊で覆われていました。
血性胸水が約15ml左右ともに貯留していました。右肺には含気がなく硬い暗赤色の病巣がありました。
脾臓は明らかに腫大していました。リンパ濾胞ははっきりしませんでしたが、脾柱は明瞭でした。
胃には多数の小さな出血があり、1匹の回虫がいました。回腸末端や盲腸には小さな表層性の潰瘍がありました。大腸にも小さな出血性潰瘍がありました。
病理組織標本からわかること
残っている標本は脳のみで、大きな異常は認められません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺の肺胞は大多数が壊死しており、その中心には細菌の塊が見られました。
皮膚では表皮が欠損し、真皮にのびる大きな空洞がありました。空洞は壊死組織で被われ、空洞内には細菌の大きな塊がありました。汗腺と毛嚢は、この部分では萎縮していました。
骨髄の大半は脂肪細胞がしめており、その中に赤血球の小さな集まりが認められました。小型リンパ球と形質細胞が多く、少数の芽球が見られますが成熟した白血球は見られませんでした。
まとめ
放射線の影響と考えられる、骨髄における造血組織の萎縮がみられます。血小板減少による出血症状が皮膚などにみられます。好中球減少により感染に弱い状態にあり、これが皮膚のびらんや腸管の潰瘍などの原因と思われます。
肺では、両側とも急性うっ血水種がつよく、血性胸水の貯留もみられます。一部では細菌塊が見られ、気管支肺炎を伴うと思われます。この肺病変が直接的な死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/02/28