No.A008
年齢 | 26 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/10/12 |
剖検年月日 | 1945/10/13 |
被爆距離 | 1800 m |
被爆時地名 | 横川町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
背部、両前腕、足にやけどを負いました。
症状の経過
発症日はわかりませんが、下痢、脱毛、発熱がみられました。
当時の記録からわかること
栄養状態は悪く、皮膚は乾燥していました。
II度のやけどが背中、両腕、両足にみられました。左上腕に壊疽性変化があり、おしりには褥瘡がみられました。
肺では、親指大あるいは鳩卵大の不規則な出血巣と、多数の黄色い結核結節が見られました。左肺下葉には直径約2cm大の化膿巣がありました。肺門部リンパ節は腫大していました。
心内膜には少数の点状出血がみられ、僧帽弁には白色の疣贅が見られました。
大脳左後頭葉には鳩卵大の膿瘍がありました。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺には結核結節が認められました。血管内にときおり細菌塊を含んだ白血球がみられました。
大腸では、粘膜は壊死性であり、多数の白血球が浸潤していました。
卵巣には多数の一次卵胞が見られましたが、卵胞の発達はみられませんでした。
頭皮では多くの毛嚢が萎縮していました。
骨髄では、造血組織が十分みられました。多くは骨髄球と後骨髄球であり、成熟した白血球は減少していました。赤芽球の小さな集まりが見られました。巨核球も少数ですが見られました。
まとめ
組織標本は残っていないため、当時の記録から推測しました。
両肺と肺門リンパ節に活動性結核症がみられます。被爆後に再燃した結核症と思われます。
左上腕にやけどによる蜂窩織炎があり、そこから細菌が入り菌血症状態であったことが疑われます。大脳の膿瘍や心内膜炎はこの菌血症によると思われます。
大腸の潰瘍、脱毛、卵巣での卵胞成熟障害などは放射線による影響の可能性が考えられます。
直接死因としては、両肺の結核症と急性うっ血水腫による呼吸不全の可能性が高いと考えます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31