No.A078
年齢 | 26 歳 |
---|---|
性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/08/29 |
剖検年月日 | 1945/08/29 |
被爆距離 | 1300 m |
被爆時地名 | 鉄砲町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
木造家屋の下敷きとなり左足に裂傷ができました。また、手にII度のやけどを受けました。
症状の経過
8月20日より発熱があり、8月28日には39℃に達しました。
8月22日から脱毛、全身倦怠感と食欲不振がありました。
8月26日より前腕に点状出血が出現しました。この日の検査では、赤血球数439万/μl、白血球数6100/μlでした。
当時の記録からわかること
頭髪は大部分が抜けていました。何ヶ所かにやけどの瘢痕がありました。点状出血が体幹、四肢、舌にみられました。
肺の側面に点状出血が散見されました。上葉より下葉でうっ血がつよく見られました。
左心室の心内膜には多数の点状出血が見られました。
脾臓は少し腫れて大きくなっており、濾胞は明瞭にはみえませんでした。
胃の粘膜に多数の点状出血が見られました。十二指腸、大腸の粘膜はむくんでいました。
病理組織標本からわかること
肝臓では類洞に軽度の急性うっ血が見られます。
腎臓の糸球体や尿細管に大きな異常はありません。
卵巣に卵胞はみられず、間質細胞も減少しています。
リンパ節にリンパ濾胞の形成が見られません。リンパ洞内には炭粉が沈着しています。
まとめ
放射線の影響として、骨髄では造血細胞の脱落が顕著です。骨髄球系細胞、有核赤血球、巨核球のいずれもごく少ないと判断されます。加えて、リンパ組織の萎縮がみられ、脾臓やリンパ節では成熟したリンパ球は減少しています。血小板の減少による出血傾向があると思われ、これによって眼瞼結膜、胸膜、心内膜、胃粘膜などに出血が多くみられます。
肺炎の所見がみられますが、好中球の減少によって、炎症反応が乏しくなっています。
卵巣での卵胞の消失も放射線の影響と考えられます。
急性気管支肺炎が主な死因と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31