No.A077
年齢 | 23 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/31 |
剖検年月日 | 1945/08/31 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
中国第104部隊の軍人でした。日本家屋の屋内で被爆しました。
外傷ややけどは負いませんでした。
症状の経過
8月20日に脱毛が始まりました。8月22日に出血を伴う口内炎と咽頭炎を発症し、8月28日まで続きました。8月23日に紫斑がみられました。
8月27日に39.4℃の発熱があり、宇品陸軍病院に入院しました。発熱は死亡日まで40.4℃、40.5℃と上昇しました。8月28日から毎日水様の下痢が続きました。
当時の記録からわかること
全身のリンパ節は多くが出血のために腫大していました。
左肺では梗塞によると思われる暗赤色の境界がはっきりとした病巣が見られました。また、暗赤色で境界のはっきりとしない病巣も多数みられました。
胃の粘膜には小さな出血点が見られました。小腸に4匹の回虫がいました。S状結腸と直腸に点状出血が見られました。大きな出血巣を形成している部分もありました。
両側の扁桃腺の表面は壊死していました。
病理組織標本からわかること
心臓の筋肉に明らかな異常はありません。
肝臓の類洞は内腔が拡張しています。軽度の炎症細胞の浸潤が認められます。
脾臓ではリンパ濾胞が縮小しています。
まとめ
骨髄では造血組織の萎縮が強く、骨髄球系、赤芽球系、巨核球のいずれも高度に減少しています。また、脾臓やリンパ節でもリンパ球は減少しています。これらは放射線による影響と思われます。血小板の減少のため出血しやすい状態であり、胃や腸管粘膜に点状出血、胸膜などに斑状出血がみられます。口腔内から咽頭にかけての急性炎症は、好中球減少により感染しやすくなっていたために起きたと思われます。
左肺には出血を伴う硬結がみられますが、炎症反応を伴わない急性気管支肺炎と思われます。
全身の出血に加えて、肺の急性気管支肺炎が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31