No.A072
年齢 | 14 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/27 |
剖検年月日 | 1945/08/28 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 国泰寺町(広島県立第一中学校) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
木造校舎の2階で被爆し、倒壊した建物の下敷きになりました。
症状の経過
被爆当日に下痢と全身倦怠感がありました。翌日はきけと嘔吐が始まりました。
8月11日に腹痛があり、8月15日に咽頭炎が生じました。8月17日に脱毛が始まり、次第に強くなりました。
8月23日には鼻出血がありました。8月26日点状出血、血尿が見られ、死亡まで続きました。
8月11日の血液検査では、赤血球406万/μl、白血球4200/μlでしたが、死亡した8月27日には赤血球414万/μl、白血球120/μlと白血球数が著しく減少していました。
当時の記録からわかること
全身の皮膚のいたるところに点状出血が見られました。胸部や腹部では、不規則な島状の発疹がありました。
臀部には黒いかさぶたが被う壊死部分がありました。唇にも壊死が見られました。
腹腔にも胸腔にも、少量の血性の液体がたまっていました。
胃、大腸の粘膜に点状出血が見られました。回盲部には潰瘍が認められました。
肺には点状出血が見られましたが、他に限局性の病変はありませんでした。
喉頭部は赤くなり、むくんでいました。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。
当時の記録には以下のような骨髄の組織所見のみが記載されています。
胸骨の骨髄の細胞密度は低く、大きな脂肪細胞が切片の大半を占めていました。細網細胞が中等度に増加しており、形質細胞やリンパ球もみられました。骨髄球や巨核球、赤芽球はほとんどみられませんでした。
まとめ
骨髄では造血細胞が減少しています。血小板減少により出血しやすく、全身皮膚や胃、大腸粘膜などに点状出血が認められます。好中球減少による免疫低下状態があると思われ、唇や皮膚の一部(臀部)に壊死がみられます。この骨髄の変化は放射線障害とみなされます。
これらの記録からは直接的な死因と考えられる重大な病変は見出せません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24