No.A071
年齢 | 44 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/11 |
剖検年月日 | 1945/09/11 |
被爆距離 | 800 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
落下物によって左半身にすり傷を負いました。
症状の経過
9月4日、約40℃の発熱とともに、性器出血がみられました。この頃から脱毛が始まりました。
翌日、咳の痛みがつよくなり、嚥下痛を伴ったため、固形物が食べられなくなりました。
当時の記録からわかること
皮膚には多くの点状出血が見られました。やけどはありませんでした。
腹腔内には少量の血液がたまっていました。
脾臓はやや腫れており、濾胞は不明瞭でした。肝臓は軽度腫れており、小葉構造は不明瞭でした。
胃、十二指腸、小腸、大腸の粘膜は正常でした。
子宮の内膜には炎症がありました。左の卵管には、鶏卵大の血腫がありました。
扁桃腺は大きく腫大し、壊死していました。咽頭や歯肉の粘膜も壊死していました。
病理組織標本からわかること
心臓では軽度の血管周囲性の線維化が見られます。心筋細胞内にリポフスチンの沈着が見られます。
甲状腺の間質にはリンパ球浸潤を伴う濾胞の萎縮が見られ、慢性甲状腺炎の所見です。
脾臓のリンパ濾胞はみられず、リンパ球は減少しています。
まとめ
骨髄では造血組織の低形成があると思われますが、標本が残っておらず確認はできません。全身皮膚他に点状出血がみられ、その他に子宮、卵管に出血巣がみられます。また、免疫低下状態にあるとみなされ、歯肉や扁桃腺などに壊死性変化を認めます。この骨髄の変化は放射線の影響と思われます。
その他の病変としては、死亡直前の変化と思われる両肺の急性うっ血水腫と慢性甲状腺炎があげられますが、直接的な死因となる明確な病変は見出せません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/06