No.A070
年齢 | 36 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
軍人でした。
頭部、顔面、頚部、両側大腿にII度のやけどを負いました。これらの部位の皮膚は赤く腫れ、一部では皮膚がはがれました。
症状の経過
両側大腿のやけどの部位は化膿し、なかなか治りませんでした。
8月31日、寒気があり、40.7℃の高熱が出ました。
9月2日、鼻血、腸管出血がみられました。
当時の記録からわかること
皮膚は蒼白でしたが、黄疸や点状出血はありませんでした。心外膜には点状出血が見られました。
左肺上葉にはいくつかの結節があり、これらの中心部には灰白色の病巣がありました。右肺下葉の側面に癒着の痕跡が見られました。胸膜全体に点状出血が散見されました。
脾臓は腫大しており、リンパ濾胞も脾柱も明瞭ではありませんでした。
肝臓には点状出血が散在しており、全般的には蒼白で黄色でした。
小腸内には3匹の回虫がいました。
病理組織標本からわかること
心筋細胞の核は軽度の大小不同が認められます。
腎臓の糸球体や尿細管は保たれています。間質の一部に炎症細胞の浸潤が認められます。
まとめ
骨髄は過形成ですが、増殖する細胞は主として未熟な細胞で成熟した白血球は少なく、成熟障害があると思われます。巨核球は多数みられ、赤芽球の増生もみられます。これらの所見は放射線による影響からの回復途中と思われます。脾臓やリンパ節におけるリンパ球産生の低下も顕著ではなく、放射線の影響ははっきりしません。
両肺には多巣性に急性気管支肺炎が認められ、急性うっ血水腫を伴っています。この、両肺の急性気管支肺炎と急性うっ血水腫が直接的な死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24