No.A007
年齢 | 48 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/10 |
剖検年月日 | 1945/09/11 |
被爆距離 | 1100 m |
被爆時地名 | 基町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で被爆しました。
右肩を打撲し、数日入院しました。
症状の経過
8月30日、突然40℃の発熱が始まりました。
8月31日には点状出血が広く出現しました。
9月9日には咳の痛みがあり、嚥下困難、歯肉出血、血性下痢を伴いました。
8日間にわたり毎日500mlの輸血を受けたにもかかわらず、9月10日に死亡しました。
当時の記録からわかること
全身の皮膚に点状出血が広く認められました。歯肉は壊死していました。
左胸膜に点状出血が見られました。
脾臓ではリンパ濾胞も脾柱もはっきりしませんでした。
肝の小葉構造は不明瞭でした。
胃粘膜は高度にうっ血していました。大腸では散在性に、出血に囲まれる潰瘍がありました。
大腿骨の骨髄は黄色髄でした。
病理組織標本からわかること
心筋の核の多形性が目立ちます。
大腸壁の一部に潰瘍があります。
小腸では粘膜層が完全に剥脱しています。
精巣の精細管内に精子は認められます。
腎臓の尿細管の上皮は壊死性変化が強く、一部の内腔に尿円柱が見られます。
まとめ
骨髄の組織標本がなく断定的ではありませんが、肉眼所見から骨髄では造血組織の低形成があると推測されます。これは放射線の影響と思われます。それによって出血傾向がみられ、皮膚をはじめ広く点状出血がみられます。また、好中球減少による免疫力低下状態のため、口腔内の壊死性変化や大腸の多発性潰瘍が存在すると思われます。
直接の死因になったと思われる病変は標本からは明らかではありませんが、大腸の潰瘍による出血性の下痢の影響が大きいと思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/05