No.A069
年齢 | 45 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/31 |
剖検年月日 | 1945/08/31 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 鉄砲町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
倒れた家のガラスの破片で首に裂傷を負いました。
症状の経過
被爆直後ははきけや下痢などはありませんでした。徐々に全身倦怠感が出現してきました。
8月21日、胸部に点状出血が出現し、頭髪の脱毛が見られました。
8月25日から39℃に達する発熱があり、死亡日まで続きました。
8月29日の検査では赤血球数200万/μl、白血球が300/μlといずれも著しい低値でした。
当時の記録からわかること
栄養状態は良好でした。皮膚には何カ所も出血があり、20cmほどの大きなものもありました。
古い傷が左足と右のふくらはぎにあり、後者の傷は治癒していませんでした。左上腕には、手のひらサイズの皮膚の欠損がありました。
約50mlの血性胸水が両側に認められました。
両肺の下葉は水分を多く含んでおり、上葉は肺気腫の状態でした。
胃粘膜は全体的に蒼白で、古い点状出血と新しい出血の両方が認められました。
病理組織標本からわかること
この方は標本が残っていません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺には多数の無気肺の領域がありました。細菌の塊がありましたが。白血球は見られませんでした。肺胞腔が滲出物で満たされている部分があり、そこでは細気管支は壊死していました。
脾臓の中心動脈のいくつかは空虚でした。胚中心はみられませんでした。
腎臓の糸球体には硝子化を示すものがありました。
肋骨の骨髄の大半は脂肪髄よりなり、成熟した好中球はみられませんでした。少数の小さな赤芽球の集まりがみられました。まれに骨髄球が見られました。
まとめ
骨髄での造血細胞の減少と脾におけるリンパ濾胞の萎縮は、放射線による影響と考えられます。それによる巨核球の減少、血小板の減少によって皮膚などに点状出血がみられ、また骨髄球系の成熟抑制によって、急性気管支肺炎(好中球の反応なし)が生じたと思われます。
両側肺の急性気管支肺炎、急性うっ血水腫による呼吸不全が直接の死因であると思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31