No.A067
年齢 | 22 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/04 |
剖検年月日 | 1945/09/04 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(西練兵場付近) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
中国第104部隊の軍人でした。
被爆が屋内か屋外かは記録されていませんが、やけどやけがはありませんでした。
症状の経過
8月24日に脱毛が出現しました。
8月30日に咽頭炎と口内炎がおこり、発熱も見られました。
8月25日から血性の下痢がありました。
当時の記録からわかること
栄養状態はやや不良でした。皮膚にはごく少量の点状出血が見られました。
肺は両側とも無気肺状であり、右肺上葉には約1/4を占める大きな円形の出血巣がありました。クルミ大までの小さな出血巣は、右肺上葉、中葉、左肺上葉にみられました。
胃の粘膜には広範囲にうっ血を認め、一部には出血がありました。回腸末端部では少数の潰瘍を伴う出血斑が見られました。大腸には、全層にわたって明らかな浮腫があり、小さな壊死巣が、遠位になるにつれ多く見られ、出血している部分もありました。
病理組織標本からわかること
残っている標本は脳と眼球のみで、これらに大きな異常は認められません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺の細気管支上皮には、部分的に、あるいは完全に壊死している部分がありました。
大腸の粘膜固有層には多数の出血が見られました。壊死している部分もありました。
精巣では多数の精子細胞や精子の痕跡、精子形成の未熟細胞が見られました。
長管骨の骨髄は低形成でした。まれに骨髄球や、一部に巨核球が見られました。胸骨の骨髄では細胞が増加していましたが、骨髄球が優位でした。赤血球産生組織が少数見られました。
まとめ
骨髄では放射線の影響と思われる造血組織の萎縮があり、血小板の減少により皮膚、両肺、胃などに点状出血がみられます。好中球減少による免疫力低下状態も存在したと思われ、扁桃腺の出血・壊死などを認めます。なお、骨髄では一部で造血の再生の所見もみられます。
両肺には、出血巣が多数認められます。細気管支上皮の壊死がみられることから、急性気管支肺炎と考えられます。
大腸には多発性に潰瘍の形成がみられ、出血を伴います。
肺の急性出血性炎症が直接死因として重要と考えます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/02/28