No.A064
年齢 | 27 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/31 |
剖検年月日 | 1945/08/31 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(第111砲兵連隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
第111砲兵連隊にいました。
家屋倒壊の下敷きとなり左上肢が押しつぶされました。
症状の経過
8月27日より高熱があり、翌日岡山陸軍病院に入院しました。この時、体温は40.3℃で、脈拍は120/分でした。頭髪はほぼ完全に脱毛していました。意識は軽度に混濁しており、正確な応答は不可能でした。
8月29日の検査では、白血球数は1400/μl、赤血球539万/μlでした。
8月30日には口腔粘膜に出血がみられ、左鎖骨下から上腕に皮下出血が見られました。次第に意識混濁が強くなり、8月31日朝に死亡しました。
当時の記録からわかること
皮膚には多数の皮下出血が存在していました。
肺では浮腫とうっ血がみられ、両肺とも前面に軽度の肺気腫が見られました。
心臓では多数の心内膜下出血がみられました。心房・心室の血液は殆んど凝固していませんでした。
腎臓の粘膜には散在性に小出血があり、膀胱にも多くの出血点が見られました。
脳の軟膜にはうっ血が見られ、大脳の側頭部に出血巣がありました。少数の点状出血が全体に散在していました。
病理組織標本からわかること
胃の胃底腺は軽度萎縮しています。
肝臓は軽度の小葉中心性変性と、一部のグリソン鞘で軽度のリンパ球浸潤が認められます。
腎臓の遠位尿細管の一部に尿円柱が認められます。
脾臓では、脾髄に急性うっ血が認められます。
リンパ節のリンパ濾胞が小型化しています。
まとめ
骨髄における造血細胞の減少は顕著です。巨核球の減少による出血傾向が存在すると思われ、皮膚や口腔粘膜の点状出血に加え、大脳の側頭部には新鮮出血が認められます。
肺には急性うっ血水腫を認めますが、気管支肺炎の所見はありません。
放射線の影響として、骨髄での造血細胞の減少に加え、脱毛が認められます。
脳出血が直接の死因となったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31