No.A061
年齢 | 29 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
中国第104部隊の軍人でした。
屋内にいたのか、けがをしたのか、などの記録は残っていません。
症状の経過
いつからかはわかりませんが、軽度の脱毛や点状出血、歯肉炎がありました。
8月31日より38℃の発熱があり、9月1日以降は40℃以上の発熱が続きました。
9月4日の血液検査では、赤血球は260万/μl、白血球300/μlと著しい低値でした。
当時の記録からわかること
皮膚には広範囲に点状出血がありました。外傷はありませんでした。
胸水は貯留していませんでした。左肺は胸膜下に出血がありました。下葉では古い出血巣がみられました。右肺には出血はありませんでした。
心臓の右心室は著しく拡張していました。左心室には軽度の萎縮と著しい拡張が認められました。
腸管には出血はありませんでした。
病理組織標本からわかること
肝臓の小葉中心部では軽度の肝細胞変性が認められます。
腎臓の尿細管内腔の軽度の拡張と、皮質・髄質でのうっ血が見られます。
精巣では精細管内に精子が認められます。
脾臓ではリンパ球はみられますが減少しています。類洞では細網細胞の増生が見られます。
リンパ節の濾胞は明瞭ではありませんが、リンパ球はみられます。
まとめ
骨髄における造血組織の萎縮によって血小板が減少し、出血しやすい状態にあり、そのために全身皮膚などに点状出血がみられます。これらは放射線の影響と思われますが、骨髄では一部に再生所見もみられます。
左肺では、急性気管支肺炎の所見がみられ、広範囲に出血を伴います。これは、出血傾向と好中球減少による免疫低下状態によると考えられます。右肺には広く急性うっ血水腫が認められます。
この、肺の急性気管支肺炎と急性うっ血水腫が直接死因になったと思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/02/28