No.A006
年齢 | 21 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/08/31 |
剖検年月日 | 1945/08/31 |
被爆距離 | 700 m |
被爆時地名 | 胡町(福屋百貨店) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
福屋百貨店の7階で被爆しました。
割れた窓ガラスで受傷し、顔と手首に裂傷を負いました。
症状の経過
被爆直後より食欲不振があり、死亡時まで続きました。
8月20日から髪の毛が大量に抜け始めました。
8月27日に高熱、点状出血、水様血性の下痢が出現しました。鼻血も続きました。
8月28日の検査所見では、赤血球254万/μl、白血球は2,300/μlと低値でした。
当時の記録からわかること
全身に点状出血がみられましたが、新しいものと古いものが混在していました。
両方の胸腔にはうすく血性の胸水がそれぞれ40ml程度たまっていました。
両肺の表面は著しくうっ血していました。上葉では小さな出血巣が多数見られました。
腎表面にはいくつかの点状出血が見られました。
扁桃腺は両側とも腫大しており、左側の扁桃の表面には小さな出血がありました。
卵管はうっ血していました。卵巣の表面には点状出血が見られました。
病理組織標本からわかること
肺門部のリンパ節では炭粉沈着が見られます。肺門部以外のリンパ節では、濾胞形成がみられ、リンパ球産生の低下はありません。細網細胞が増加しています。
脾臓ではリンパ濾胞が消失しており、リンパ球は減少しています。類洞が拡張しています。
まとめ
両肺には好中球浸潤を伴う多巣性の病変がみられ、急性気管支肺炎と診断されます。さらに、中等度の急性うっ血水腫と無気肺の所見が見られることから、呼吸不全状態であったと推測されます。
放射線の影響としては、脱毛と点状出血を認めますが、骨髄の標本はなく、造血機能は判断できません。
大腸では、粘膜固有層に高度のリンパ球浸潤が認められますが、その原因は明らかではありません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/21