No.A055
年齢 | 50 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/11 |
剖検年月日 | 1945/09/11 |
被爆距離 | 900 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で被爆しました。
やけどやけがはありませんでした。
症状の経過
8月末から脱毛が始まりました。
9月4日に40℃の発熱、頭痛があり、皮膚に点状出血とソラマメ大のあざが見られました。歯肉から出血があり、重度の嚥下困難に苦しみました。
当時の記録からわかること
栄養不良状態でした。頭髪の脱毛は軽度でした。
舌は汚い膜で被われ、扁桃腺は壊死していました。歯肉も壊死していました。
心臓の心外膜と心内膜に点状出血が見られました。
脾臓の脾柱は明瞭で、濾胞は不明瞭でした。肝臓の小葉構造は不明瞭でした。
胃粘膜の表層部には少数の点状出血が見られました。小腸には軽度のうっ血がありました。
腎実質はうっ血し散在性に出血が見られました。
病理組織標本からわかること
心臓の心筋線維はやや細く、核に多形性が見られます。リポフスチン沈着が目立ちます。
肺の肺胞内に少数の炎症細胞を含む滲出液があり、軽度の急性気管支肺炎の所見です。
リンパ節にリンパ濾胞はみられます。
精巣の精細管内に精子が見られます。
皮膚では毛嚢と脂腺の萎縮が見られます。
まとめ
骨髄では造血組織の低形成がみられ、これは放射線の影響と思われます。そのために出血傾向があり、皮膚などに点状出血がみられます。また、免疫低下状態によると思われる口腔内の壊死性変化を認めます。しかし骨髄では、一部に造血組織の再生もみられます。
脾臓とリンパ節では、放射線の影響で小型リンパ球は減少していますが、大型リンパ球の出現がみられ、再生の所見もあると思われます。
肺では限局性に急性気管支肺炎がみられ、広く急性うっ血水腫を伴います。これが直接的な死因と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/05