No.A054
年齢 | 22 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/08 |
剖検年月日 | 1945/09/08 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第111部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で被爆しました。
やけどはしませんでしたが、飛んできたガラスの破片で頭や背中に裂傷を負いました。
症状の経過
8月20日に脱毛と全身の点状出血が出現しました。
9月3日に口内炎と咽頭炎を生じ、顎下リンパ節の腫大がみられ、宇品陸軍病院に入院しました。
9月5日、左頬部に大型の潰瘍ができ、周囲の腫れと左顎下部の痛みを伴いました。
9月8日には顔面と上胸部に浮腫がみられました。9月3日から死亡時まで、39℃から40.2℃の発熱が続きました。
9月4日の血液検査では、赤血球239万/μl、白血球700/μlと著しい低値でした。
当時の記録からわかること
全身の皮膚に点状出血がありました。左頬の皮膚にはびらんがあり、のどから顎の下にかけてガラス片を含む傷がありました。後頭部には傷とその周囲に出血を認めました。
両肺には多数のソラマメ大までの出血がありました。左胸腔に血性の胸水がたまっていました。
胃や大腸の粘膜には点状出血が見られました。
腸間膜、顎下部、傍気管、肺門部、肝門部、後腹膜のリンパ節が腫大していました。
扁桃腺は壊死し、出血を伴っていました。喉頭蓋の内側にも壊死が見られました。
病理組織標本からわかること
残っている標本は腎臓のみです。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺では細気管支内にみられる壊死物質内に、細菌の塊が見られました。壊死は周囲の肺胞へ拡がっていました。
長管骨の骨髄では、成熟好中球は少なく、リンパ球と形質細胞が主体でした。巨核球は減少していました。赤芽球の大きな集まりが多くみられました。
まとめ
骨髄では造血組織の萎縮がみられ、巨核球、血小板の減少による出血しやすい傾向があり、全身の皮膚、心外膜、胃や大腸の粘膜に点状出血、両肺などに斑状出血がみられます。感染に弱い状態にあったと思われ、口内粘膜の壊死や皮膚の外傷後の遷延する潰瘍などもみられます。これらは放射線の影響と思われますが、骨髄では一部に再生性変化が生じているとみなされます。
肺では、急性気管支肺炎と周囲に急性うっ血水腫が認められます。これらの肺の病変が直接的な死因と考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/02/28