No.A048
年齢 | 34 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/10 |
剖検年月日 | 1945/09/11 |
被爆距離 | 1200 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で、開けられた窓のそばに坐っていた時に被爆しました。ワンピースを着用していました。
顔の右半分に軽度の裂傷と、足に挫傷を負いました。
症状の経過
8月中旬までは元気に過ごしていました。
8月末になり頭髪が徐々に抜けはじめ、9月1日に軽度の発熱と全身倦怠感がありました。
9月4日に突然40℃の発熱を来し、咳の痛みもありました。便は次第に血性となりました。
9月6日に皮膚に点状出血がみられ、9月9日には歯肉出血も始まりました。
当時の記録からわかること
全身に点状出血が見られました。死亡から時間が経過していたため、全身が腫れていました。
腸間膜リンパ節の一部は腫大していました。
大腸には潰瘍と出血および紫斑が見られました。直腸はむくみが強く、点状出血を伴っていました。
大腿骨の上2/3の骨髄は赤色髄でした。
扁桃腺は両側とも腫れていました。喉頭蓋の下方の表面に点状出血がありました。咽頭には壊死している部分がありました。
病理組織標本からわかること
標本はあるのですが、死亡から解剖までに34時間が経過しており、死後の変化が強く組織の観察をすることが困難です。(そのためスキャンは行っていません)
以下は当時の記録にある組織所見です。
肺や心臓、腎臓は死後変化がつよく、所見をとれませんでした。
死後変化のため、腸管の粘膜は見えませんでした。粘膜下層には浮腫が見られました。
扁桃腺に細菌の塊がみられました。死後変化と壊死の区別が困難でした。
咽頭の大半の部分は、細菌塊を含む物質に覆われていました。
まとめ
死後の変化が強いため、主に当時の記録から推察しました。
全身皮膚などに点状出血がみられることや、扁桃腺を中心とした壊死性変化が口腔内に広く認められることなどから、放射線による骨髄の造血組織の低形成があると推測されます。
大腸の潰瘍性病変があり、血性下痢を生じたと思われます。
腸間膜リンパ節の腫大は大腸の病変によると思われます。
直接死因として、菌血症の存在が疑われますが、根拠となるはっきりとした所見は指摘できません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/02/28