No.A047
年齢 | 23 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/01 |
剖検年月日 | 1945/09/01 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 水主町(中島国民学校) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
建物疎開作業中に被爆した中国第104部隊の軍人です。
屋外で被爆しましたが、やけどや、けがはありませんでした。
症状の経過
8月28日に宇品陸軍病院へ入院した時、脱毛と点状出血、嚥下痛を伴う著しい口内炎がありました。喀血もみられました。体温は39℃から 40.3℃でした。
8月31日口内炎が悪化し、血痰が多量にでました。
入院時の血液検査では、赤血球は339万/μlと正常、白血球は400/μlと著明な低値でした。
8月31日には、赤血球214万/μlと減少し、白血球も25/μlとさらに減少していました。
当時の記録からわかること
体格はよく、栄養状態も良好でした。腰の左側に潰瘍がありました。全身に点状出血がみられました。
右肺上葉に境界のはっきりとした出血がありました。右肺の細気管支の周囲に出血を伴う小さな壊死巣がありました。左肺下葉にも大きな出血がありました。
胃粘膜にはかなりの数の点状出血が見られました。潰瘍はありませんでしたが粘膜は全体に萎縮性でした。空腸にはやや大きな出血がありました。回盲部には多くの小さな潰瘍が見られました。
右の扁桃腺は壊死して黒色でした。舌には出血に囲まれた壊死巣があり、喉頭蓋まで広がっていました。
病理組織標本からわかること
残っている標本は脳のみであり、大きな異常は認められません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肝臓には被膜に厚く囲まれた壊死物質の塊と、その外側に多数のリンパ球や形質細胞が見られました。
皮膚の一部で表皮の欠損があり、壊死が皮下組織に達していました。皮膚内に細菌塊が見られました。
リンパ節では成熟したリンパ球はかなり少数でした。
骨髄の大半は脂肪髄であり、成熟白血球はみられませんでした。巨核球は少数で、ごくまれに顆粒球、有核赤血球が見られました。
まとめ
骨髄では、造血組織の高度の萎縮がみられ、脾臓およびリンパ節ではリンパ球産生の障害があると推測されます。これらは放射線の影響と考えられます。巨核球の減少による出血傾向があり、皮膚や胃腸管の粘膜などに多数の点状出血がみられます。
両肺でも広い範囲で出血巣がみられ、また一部で細気管支に壊死をみることから、出血性の気管支肺炎の可能性が高いと思われます。これが直接の死因と考えられます。
右の扁桃腺や舌の壊死性変化は、好中球減少による免疫低下の影響と思われます。肝にも1カ所、被包化された壊死巣があり、肝膿瘍と推測されます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31