No.A046
年齢 | 22 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/08 |
剖検年月日 | 1945/09/09 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
兵舎内で被爆しました。ズボンと下着とコートを着ていました。
外傷ややけどは負いませんでした。
症状の経過
8月6日から全身倦怠感と食欲不振がありましたが、9日には改善し、14日まで仕事を続けました。
8月25日に発熱があり、全身倦怠感と食欲不振が再びひどくなりました。また、歯肉出血と喉の痛みがありました。脱毛が強くなり、咳と痰が見られました。
9月6日の血液検査では、赤血球281万/μl、白血球430/μlといずれも減少しており、出血時間は15分と延長していました。
当時の記録からわかること
体は細く、栄養状態は不良でした。少数の点状出血が顔面と下肢にみられました。
胸膜表面には多数の小さな出血点が見られました。肺内にも多数の小さな出血が見られました。
心内膜には少数の点状出血が見られました。
胃の中には3匹の回虫がいました。胃の粘膜には数個の点状出血が見られました。
左腎では腎盂には多くの点状出血がありましたが、右腎にはありませんでした。
舌は小さく、黒紫色の粘膜で被われていました。
病理組織標本からわかること
心臓の心筋細胞には褐色の色素が目立ちます。核の多形性も認められます。
腎臓は死後変化が高度で、所見がとれません。
まとめ
骨髄では造血細胞の減少を示す部分と造血細胞が保たれた部分が認められます。血小板の減少により出血しやすかったと思われ、出血時間が延長し、皮膚、胸膜、心内膜に点状出血がみられます。感染に弱い状態であり、歯肉の壊死や咽頭の炎症がみられます。これらは放射線の影響と思われますが、一部では再生所見もみられます。
脾臓やリンパ節におけるリンパ球産生の低下、精巣における精子低形成の所見も放射線による影響と思われます。
両肺には急性うっ血水腫がみられますが、直接的な死因となる重大な病変は見出せません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24