No.A045
年齢 | 22 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/01 |
剖検年月日 | 1945/09/01 |
被爆距離 | 1500 m |
被爆時地名 | 基町(教育連隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
教育連隊において屋外で被爆しました。
症状の経過
8月18日に宇品陸軍病院から岡山陸軍病院へ転院しました。この時、顔、背部、両手背、左足裏のやけどを認め、体温は38℃でした。
8月28日には熱は40℃に達しました。
8月29日の白血球数は800/μlと著明に減少していました。顔のやけどはほぼ治癒しましたが、頭髪と眉毛は脱毛状態が続きました。胸腹部には点状出血を認めました。
当時の記録からわかること
全身の皮膚に黄疸があり、皮下組織のいたるところに点状出血が見られました。やけどは衣服で覆われた部分や帽子で被われた頭部にはありませんでした。頭髪はほぼ完全に脱毛していました。胸膜にはごく少数の点状出血が存在しました。肺には限局性の出血肺炎の所見が認められました。脾臓は軽度のうっ血を示し、濾胞は明瞭ではありませんでした。肝臓の色調は全体に黄色でした。精巣に肉眼的な変化はありませんでした。
病理組織標本からわかること
腎臓の間質に多巣性に新鮮出血が見られます。
精巣では、精細胞は顕著に減少し、精子形成は一部にしかみられません。
脾臓は萎縮が強く、リンパ球産生が低下しています。
リンパ節には濾胞構造がみられません。
まとめ
骨髄において、造血細胞の減少が著しく、生前の白血球の減少を裏付けます。また、脾臓とリンパ節でもリンパ組織の顕著な萎縮がみられます。全身の皮膚や皮下組織などにみられた出血は、骨髄における巨核球の減少が原因と考えます。これらはいずれも、原爆放射線による急性期の障害と思われます。
精巣での精子形成の低下や脱毛も放射線の影響と考えます。
肝臓の軽度の脂肪変性は低栄養によるものと思われます。白血球減少による免疫力低下があるため感染症がなかなか良くならず、最終的には両肺の急性気管支肺炎とうっ血水腫による呼吸不全が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/21