No.A039
年齢 | 14 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 1600 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
開いた扉の外で被爆しました。カーキ色のコートとシャツと帽子を身につけていました。
衣服が燃えて、顔、首、両手、足、右胸、左大腿など、体の広範囲にやけどを負いました。
症状の経過
被爆により意識不明となり、2日後に一時的に意識が戻りましたが、その後も意識障害があり、8月31日から死亡した9月5日までは精神錯乱状態でした。
8月15日に39.5℃の発熱が始まり、死亡時まで続きました。
9月1日の血液検査では赤血球372万/μl、白血球1300/μlでした。
当時の記録からわかること
著しく栄養不良でした。両足の前面の皮膚は潰瘍化し、悪臭のする膿が認められました。頚部と右胸部の前面にも潰瘍がありました。
両肺の後面には点状出血がありました。著明なうっ血を伴っていました。
左腎は著しく腫れ、紫色の結節で囲まれた小さな黄色の化膿性病変が見られました。
右腸腰筋には膿瘍がみられました。その下には出血があり、出血は鼠径部に拡がって大腿骨にまで及んでいました。
病理組織標本からわかること
心臓では心筋細胞に軽度の核の多形性が見られます。
甲状腺は濾胞の軽度の大小不同が見られます。
脾臓のリンパ濾胞は小型でリンパ球は高度に減少しています。
リンパ節の皮質ではリンパ球が多く見られ、リンパ洞は拡張しています。
扁桃腺では扁平上皮の壊死と上皮下のリンパ球の残存と毛細血管の増生が見られます。
まとめ
骨髄の標本が残っていないため確認はできませんが、造血細胞の高度な減少があると推測されます。点状出血は限局性にしかみられませんが、扁桃腺の壊死性変化や左腎の膿瘍およびやけどを受けた皮膚の潰瘍化と化膿性炎症の存在からは、免疫低下状態にあったと推測されます。
この骨髄の変化と脾臓におけるリンパ球の産生の低下は、放射線の影響と思われます。
両肺には軽度の急性気管支肺炎を認めます。
左腎臓の梗塞と右腸腰筋の膿瘍は、皮膚のやけど部位にみられた膿瘍から生じた菌血症による可能性が高いと思われます。この菌血症あるいは敗血症が直接の死因と考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24