No.A034
年齢 | 15 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/09 |
剖検年月日 | 1945/09/10 |
被爆距離 | 500 m |
被爆時地名 | 袋町(広島電信局) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
7階建てのコンクリートビルの5階で被爆しました。被爆時一時意識を失いました。
右眼に痛みがあり、両大腿と右下腹に小さなやけどを負いました。
被爆後安芸村の家へ帰りました。
症状の経過
足の傷は治癒しました。
8月24日に軽度の発熱がありました。8月26日から脱毛がみられ、8月27日に再び発熱が出現、8月28日に全身倦怠感と食欲不振が始まりました。
8月31日に鼻出血、両側扁桃炎、咽頭炎がありました。
8月28日の血液検査では、赤血球363万/μl、白血球2000/μlでしたが、 8月31日には赤血球339万/μl、白血球940/μlに減少、9月4日には赤血球290万/μl、白血球550/μlとさらに減少していました。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。少量の黄色の腹水がたまっていました。
肺の下葉後面にうっ血が見られましたが。全体に含気は保たれていました。
胃の小弯には、ソラマメ大のうっ血が見られました、点状出血はありませんでした。
腎臓の腎盂には点状出血がありました。尿管には大きな変化はありませんでした。
舌根部、扁桃腺、咽頭は壊疸性変化を示していました。喉頭蓋の粘膜も壊死していました。
病理組織標本からわかること
心臓の心筋細胞では核の多形性が目立ちます。
肝臓の小葉中心部に軽度の肝細胞の萎縮が見られます。グリソン鞘には大きな変化はありません。
リンパ節のリンパ球の密度は高く、リンパ洞の拡張はありません。
舌の扁平上皮の過形成はありません。上皮下に炎症細胞浸潤はあまり見られません。
まとめ
骨髄は脂肪髄で、造血細胞の減少があると思われますが、出血症状の記載は一部にしかありません。しかし、白血球数は減少しており、舌、扁桃腺、咽頭には壊死性変化がみられ、免疫低下状態であったことが示唆されます。これらの変化は、原爆による放射線の影響と思われます。
その他、頭髪の脱毛も放射線の影響と思われます。
急性気管支肺炎などの感染症が直接的な死因と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24