No.A032
年齢 | 23 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
前頭部、上肢、右下肢にやけどを負いました。
症状の経過
やけどの部位は腫れて、水疱もみられました。
9月2日に悪寒と発熱がありました。歯肉炎、鼻血と腸管出血がみられました。
当時の記録からわかること
やけどはほぼ完全に治癒し、右手背と左上腕に瘢痕が認められました。右足背のやけど部位の中心にソラマメ大の潰瘍がありました。
左肺下葉の後面には鶏卵大の硬い結節がありました。右肺の前面は軽度に気腫性でした。後面には出血によると思われる大きな暗赤色の領域がありました。
脾臓は軟かく、リンパ濾胞はみられませんでした。
胃内に小さな点状出血が多数みられました。大腸では粘膜に著しいうっ血をみとめ、表層性の潰瘍がいくつか存在していました。
病理組織標本からわかること
肝臓の小葉中心部では肝細胞が萎縮しています。類洞のうっ血を伴っています。
膵臓の小葉構造はよく保たれています。
リンパ節では類洞での組織球様細胞の増生が目立ちます。リンパ球の減少は軽度です。
まとめ
骨髄の組織標本では、細胞密度はありますが細胞の多くを形質細胞や大型のリンパ球が占め、骨髄球や赤芽球は少なく、有効な造血にまではいたっていません。これは放射線の影響と考えられます。胃や腸における点状出血は、骨髄障害による血小板減少のためと思われます。
脾臓やリンパ節でもリンパ球産生が低下しており、これも放射線の影響と思われます。
両側の肺では、多巣性に細菌塊を伴う急性気管支肺炎が認められ、これが直接的な死因となったと思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31