No.A030
年齢 | 45 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/02 |
剖検年月日 | 1945/09/02 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国104部隊兵舎) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
中国第104部隊の軍人でした。
木造兵舎の屋内で被爆しました。
やけどや外傷はありませんでした。
症状の経過
8月15日に、壊死性の歯肉炎と咽頭炎が出現しました。脱毛はありませんでした。
8月28日に皮膚の点状出血が見られました。8月28日に発熱があり、死亡日まで上昇が続きました。
当時の記録からわかること
栄養状態は良好でした。上肢や肩にいくつかの点状出血がみられました。
両肺とも下部で、胸膜と癒着していました。右肺上葉では出血がみられ、左肺上葉の下半分にも出血が見られました。右肺下葉の内側と左肺下葉の側面には胸膜下に出血がありました。
胃粘膜には強いうっ血がありましたが、出血や潰瘍はみられませんでした。空腸に2匹の回虫がいました。大腸では粘膜に広い範囲で小さな点状出血が見られましたが、直腸には出血はありませんでした。
脳に浮腫や充血は認められませんでした。
病理組織標本からわかること
残っている標本は脳のみであり、大きな異常は認められません。以下は当時の記録にある組織所見です。
皮膚には潰瘍があり、表層部には出血がありました。細菌塊が皮膚の浅い部分にみられました。
頭皮の毛嚢のいくつかでは顕著な不規則性があり、毛嚢の基底部で毛幹の角化の障害が認められました。汗腺の萎縮もみられました。
リンパ節では成熟したリンパ球は減少しており、胚中心はみられませんでした。
胸骨の骨髄は低形成であり、リンパ球が主で、まれに骨髄球系細胞、赤血球産生組織が見られました。
まとめ
骨髄における造血不全が強く、巨核球の減少、血小板の減少による全身皮膚などでの点状出血および両肺上葉の斑状出血がみられます。歯肉炎、咽頭炎、皮膚の感染を伴う潰瘍形成は、好中球減少による免疫力低下が原因と思われます。
脾臓やリンパ節でもリンパ球の産生低下がみられます。これらの造血組織の萎縮は、放射線の影響と考えます。
その他の放射線による障害としては、頭皮における毛嚢の萎縮による脱毛などがあげられます。
直接的な死因としては、両肺の出血や浮腫による呼吸不全の可能性が高いと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31