No.A029
年齢 | 29 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/05 |
剖検年月日 | 1945/09/05 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
軍人でした。木造家屋の2階屋内で被爆しました。
壁と天井が落下し、負傷したにもかかわらず、救助活動に参加しました。被爆後10日間、東練兵場で働きました。
症状の経過
8月26日に頭部脱毛と発熱が出現しました。
8月31日、強いだるさと食欲不振があり、西条の傷痍軍人広島療養所に入院しました。出血性の歯肉炎と咽頭炎がありました。高度な脱毛がみられました。
9月1日に咽喉痛,嚥下痛があり徐々に悪化しました。
9月4日に意識は混濁し、嘔吐と黒色の下痢がありました。40℃前後の発熱が死亡日まで続きました。
8月30日の白血球は550/μlと著明な低値でした。
当時の記録からわかること
全身に多数の点状出血が見られました。頭髪は脱毛していました。歯肉は壊死していました。
肺は強く癒着していて、両側とも散在性に多くの点状出血や大きな出血がありました。
心外膜に点状出血が見られました。
胃粘膜には、点状出血や大型の出血がありました。空腸や回腸の粘膜に小さな出血がありました。
両側の扁桃腺は壊疸を示していました。喉頭蓋や気管には著しいうっ血がみられ、点状出血を伴っていました。
大腿骨の骨髄は黄色で明らかに脂肪髄でした。
病理組織標本からわかること
心臓に大きな異常はありません。
胃の粘膜固有層に中等度の慢性炎症細胞浸潤が見られます。
腎臓の糸球体には大きな異常はありません。尿細管の内腔は軽度拡張しています。
脾臓のリンパ濾胞は高度に萎縮しており、リンパ球は減少しています。
扁桃腺の扁平上皮に壊死が強く、周囲のリンパ球は保たれていますが好中球は減少しています。
まとめ
骨髄は脂肪髄で、一部に膠様変化を伴い、著しい造血細胞の減少がみられます。それによる出血傾向は高度で、全身皮膚や消化管に広く点状出血がみられます。
扁桃腺の壊死は免疫低下状態が存在することも示唆します。また、脾臓ではリンパ球の産生の低下がみられます。これらは原爆による放射線の影響と思われます。頭髪の脱毛も放射線による影響と思われます。
肺では、散在性に出たばかりと思われる出血を認め、両肺下葉の急性うっ血水腫を伴います。この両肺の病変が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24