No.A028
年齢 | 19 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/08 |
剖検年月日 | 1945/09/10 |
被爆距離 | 500 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
木材の破片によって左耳の前に大怪我をしました。
症状の経過
9月1日から歯ぐきの出血と頭髪の脱毛が始まり、39℃の発熱もありました。
9月5日の血液検査では、白血球は1100/μlと減少、特に好中球が減っていました。赤血球数も240万/μlと減少しており、血小板数の記載はありませんでしたが、出血時間は19分30秒とかなり伸びていました。
当時の記録からわかること
左耳付近に骨に達する傷があり、まだ治っていませんでした。四肢には多数の点状出血がありました。
肺は暗紫色で、上葉に出血斑がありました。下葉は著しいうっ血を認めました。
胃内には灰色から茶色の液体が貯留し、粘膜には約0.5cm大の小出血がありました。直腸の粘膜に出血斑あるいは血液の漏出が見られました。
腎臓の表面は蒼白で、粟粒大からソラマメ大の出血斑、腎盂粘膜には多数の点状出血がありました。
骨髄組織の大半は脂肪髄でした。
病理組織標本からわかること
心臓、腎臓、脳、膀胱に異常はありませんでした。
脾臓ではリンパ球の産生が低下していました。
まとめ
骨髄において造血細胞がほとんどみられないことは、白血球の減少、赤血球の減少を裏付けます。放射線による急性期の障害として骨髄機能が低下、おそらく血小板も減少しており、そのために皮膚の点状出血、胃粘膜や腎臓の粘膜、口腔粘膜などの出血が起きたものと思われます。
直接死因として、標本から直接指摘することはできませんが、血球減少が著明であったこと、高熱が続いていたことなどより感染症が原因ではないかと考えられます。
左耳の傷が治っていなかったとのことですので、そこから菌が入ったのかもしれません。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31