No.A026
年齢 | 35 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/09 |
剖検年月日 | 1945/09/10 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
木造家屋の屋内で被爆しました。夏物の着物とモンペを着用していました。
右鎖骨を骨折し、左腕にやけどを負いました。
症状の経過
8月28日、喉の痛みがあり、2?3日後、40℃の発熱がみられました。口腔内と咽頭は黄色の膜で被われました。
9月1日に下痢が始まり、次第に血性となりました。やけどは潰瘍化し膿んでゆきました。
9月8日、2度喀血しました。
当時の記録からわかること
右上腕、首、腹部、大腿部の皮膚に点状出血が見られました。歯肉からの出血がありました。左腕に手のひら大の潰瘍がみられ、かさぶたで被われていました。頭髪は脱毛していました。
大腸の粘膜には壊死している部分が不規則に存在していました。直腸にも同様の病変があり、粘膜の点状出血もみられました。
扁桃腺は両側とも壊死していました。
病理組織標本からわかること
肝臓では軽度の小葉中心性の変性が見られます。
延髄に大きな異常はありません。
まとめ
骨髄における造血組織の萎縮があると推測されますが、骨髄の標本は残っていないため直接確認はできていません。骨髄機能低下による血小板減少のため、全身の皮膚の点状出血がみられ、好中球減少による免疫力低下のため、皮膚のやけどの潰瘍化や扁桃線や咽頭の粘膜の壊死がみられます。これらは放射線の影響と思われます。
肺の急性うっ血水腫や肺の小葉中心性変性は死亡直前の変化と思われます。はっきりと証明できる所見はありませんが、発熱が続いていたことなどを合わせて考えると、菌血症による急性循環不全(敗血症性ショック)が死因になったと推測されます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/05