No.A023
年齢 | 34 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/08/24 |
剖検年月日 | 1945/08/24 |
被爆距離 | 800 m |
被爆時地名 | 堀川町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
福屋百貨店近くの2階建ての日本家屋の1階で被爆しました。
体の様々な部位に裂傷を負い、壁の倒壊によって胸に挫傷を負いました。
症状の経過
8月6日にはきけと嘔吐があり、8月8日まで続きました。血性の下痢もありました。
8月16日に入院しました。8月18日に頭髪の脱毛がみられました。歯肉炎と咽頭炎がありました。
8月20日から死亡時まで、39℃から40℃の発熱が続きました。
8月18日の血液検査では、赤血球313万/μl、白血球400/μlと低値でした。
当時の記録からわかること
栄養状態はやや不良でした。後頭部以外はほぼ完全に脱毛していました。
両側の眼球結膜に皮下出血がありました。皮膚に卵大までの膿疱がありました。左上肢の前面と、左肩の近くに浅い皮膚潰瘍が見られました。
右肺には少数の黄色の硬結がありました。下葉では親指大の出血がいくつか見られました。
胃の粘膜には多数の点状出血が見られました。
両側の扁桃腺は壊死していました。
病理組織標本からわかること
残っている標本は脳のみです。脳に明らかな異常は認められません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺には壊死巣があり、その中に細菌の塊が見られます。
潰瘍のある部位の皮膚では、表皮の剥脱がみられ、表層の細胞は腫大していました。潰瘍の底は壊死性の膠原線維からなり、多数の赤血球が浸潤していましたが白血球はみられませんでした。
長管骨の骨髄は、大半がうっ血を伴う脂肪組織でした。少数の小型の赤芽球がみられました。
まとめ
骨髄では造血組織の萎縮がみられ、巨核球・血小板の減少により出血しやすくなっており、胃粘膜などの点状出血や両側眼球結膜の出血などがみられます。好中球減少による免疫力低下のため、左上肢の裂傷後の潰瘍形成や扁桃腺の壊死がみられます。これらの変化は、放射線の影響と思われます。
右肺では出血を伴う急性気管支肺炎が存在し、急性うっ血水腫も伴っています。この、右肺の急性気管支肺炎が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/04/14