No.A002
年齢 | 19 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/10/09 |
剖検年月日 | 1945/10/11 |
被爆距離 | 2300 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外の路上で被爆しました。半袖にモンペを着ていました。
背中と足にやけどを負いました。
症状の経過
8月15日から23日までの間、下痢がありました。
7月には月経がありましたが、8月、9月はありませんでした。皮膚に点状出血はありませんでした。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。
大きなII度のやけどが、背中と左右の上下肢にみられました。やけどは腹部にもありました。左の下唇に裂傷がみられ、膿が出ていました。
腹腔内には約30mlの腹水が、胸腔では左に100ml、右に20mlの胸水がたまっていました。心外膜にはいくつかの点状出血や斑状出血があり、60mlの心のう水も見られました。
両肺とも下葉はうっ血していました。左肺には肺炎の硬結と思われる小さな黄色の病巣がありました。
扁桃腺は軽度腫大していました。
病理組織標本からわかること
心筋に大きな変化はありません。
腎臓には細菌塊が見られますが、これは死後に菌が増殖したものと思われます。
卵巣では原始卵胞が散在しています。多数の白体の形成も認められます。
扁桃腺の上皮下のリンパ球は減少しています。
まとめ
骨髄の組織標本では、比較的細胞密度の高い部分もみられますが、形質細胞や大型のリンパ球が多く、正常の造血は乏しいと思われます。放射線によると思われる造血不全のため出血傾向をきたし、点状出血が心外膜などにみられます。一方、脾臓などのリンパ組織では、リンパ球産生は良好に保たれていると推測されます。
肺には急性うっ血水腫がみられ、腎臓では尿円柱の形成がみられ、腹水、胸水、心嚢水の貯留などがあることから、全身の急性循環不全が存在したと思われます。急性循環不全の原因となる明らかな病変は標本からはわかりませんが、栄養失調状態や広範囲のやけどなども死亡に影響したと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/03/31