No.A019
年齢 | 24 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/28 |
剖検年月日 | 1945/08/29 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外で被爆しました。
顔面、両耳、頚部、右手背にII度のやけどを負いました。被爆後2日間現地に滞在しました。
症状の経過
8月12日に岡山陸軍病院に入院しました。やけどの部位は化膿していましたが、8月20日までにはおさまりました。
8月22日から下痢がみられ、全身が衰弱してゆきました。
8月26日の白血球数は1200/μl、赤血球は357万/μlでした。
8月27日、大量の鼻血があり、貧血が進行しました。
8月28日にも鼻から出血があり、全身状態は悪化しました。
8月29日、呼吸困難と全身浮腫があり、苦悶状態で死亡しました。
当時の記録からわかること
顔の右半分、右耳、右手背のやけどはまだ上皮に被われていませんでした。両上肢に点状出血、肩には小斑状の出血が見られました。
左肺の下葉は浮腫性でしたが、結節などの病変はありませんでした。胸膜表面には点状出血が見られました。肺門リンパ節には著しい炭粉沈着がありましたが、腫れてはいませんでした。
心外膜には点状出血が見られました。
胃の粘膜は貧血性で、粘膜下組織に出血が見られました。
病理組織標本からわかること
肝臓には小葉中心静脈周囲に軽度のうっ血が見られます。
脾臓ではリンパ濾胞が萎縮しており、細網細胞が目立ちます。
大脳や小脳に異常はありません。
まとめ
骨髄の標本は残っていませんが、点状出血や鼻出血などの出血傾向があったこと、扁桃腺の急性炎症から感染しやすい状態があったと考えられることより、造血細胞が減少していたことが推測されます。この骨髄低形成と、脾臓におけるリンパ球産生の低下は放射線による影響と考えられます。
両肺に急性気管支肺炎を認めますが、その程度は軽度です。肝臓や腎臓に顕著な変化はありません。
鼻出血を繰り返していたとのことであり、出血が死亡の原因となった可能性があります。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31