No.A016
年齢 | 22 歳 |
---|---|
性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/08/30 |
剖検年月日 | 1945/08/31 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 三川町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
警察裏門前の道で被爆しました。
黒い木綿のモンペと白のブラウスを着ていました。
症状の経過
8月19日から脱毛がありました。
8月23日に腹痛、下痢、39℃の発熱がありました。
8月24日には解熱しましたが血の混じった下痢が続きました。両側の扁桃腺は腫大していました。
8月26日に粘血便が10回あり、夜に熱が40℃に達しました。徐々に状態が悪化し、腹痛、40℃以上の熱が死亡するまで続きました。
8月22日の血液検査では白血球3100/μlでしたが、8月25日は850/μlと減少、26日には220/μlとさらに減少していました。
当時の記録からわかること
頭髪は著しく脱毛していました。胸部の皮膚に点状出血が見られました。
胸膜に点状出血や乾酪物質がみられました。気管支リンパ節が乾酪巣を含んで腫大していました。右肺上葉に硬い結節があり、乾酪物質が認められました。
胃や腸の粘膜に多くの点状出血がありました。回腸に3つの潰瘍がありました。上行結腸に結核性と思われる小さな潰瘍がありました。
扁桃腺は腫大し、壊死していました。右扁桃には潰瘍があり、喉頭蓋にかけて粘膜の壊死が広がっていました。
病理組織標本からわかること
肝臓では小葉全体に肝細胞の萎縮が認められます。線維化や細胞浸潤はありません。
腎臓の糸球体や尿細管には大きな異常はありません。
甲状腺では濾胞の大小不同が目立ちます。
脾臓のリンパ濾胞は萎縮が強く、類洞は拡張し、細網細胞の増殖が顕著です。
まとめ
骨髄では造血細胞の高度な減少があり、血小板減少による出血傾向として、胸膜や胃、大腸粘膜に、点状出血を認めます。好中球減少による免疫低下状態もあり、扁桃腺から喉頭蓋にかけて壊死や潰瘍がみられ、回腸から大腸にも多巣性に壊死性潰瘍を認めます。この骨髄の変化は放射線障害と思われます。
脾臓やリンパ節においてもリンパ球産生の低下がみられ、脱毛とともに放射線の影響と思われます。
両肺には多巣性に乾酪壊死を伴う活動性結核を認めます。これは免疫低下による陳旧性結核の再燃と考えられます。結核結節以外にも乾酪性肺炎を広く認めます。
両肺の活動性結核と乾酪性肺炎が直接的な死因と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24