No.A131
年齢 | 29 歳 |
---|---|
性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/01 |
剖検年月日 | 1945/09/01 |
被爆距離 | 700 m |
被爆時地名 | 基町(陸軍司令部) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
コンクリート造りの陸軍司令部から数歩はなれた戸外にいた時に被爆しました。
落下してきた天井にあたり、頭と首に軽度の傷を負いました。
症状の経過
被爆当日、はきけが強く、20回以上嘔吐しました。だるさと食欲不振が8月10日まで続きました。
8月21日に脱毛と歯肉炎があり、西条の傷痍軍人広島療養所に入院しました。
8月25日から紫斑、8月30日から歯肉出血が出現し、喀血しました。8月24日から死亡するまで高熱が続きました。
8月24日の血液検査では、赤血球395万/μl、白血球370/μl、8月29日は赤血球419万/μl、白血球200/μlと、白血球が著明に減少していました。
当時の記録からわかること
全身の皮膚には暗赤色の点状出血が散在していました。歯肉の端に壊死を伴う炎症がありました。
左肺上葉には強いうっ血と浮腫があり、ソラマメ大の出血巣が全体に散在していました。右肺では境界明瞭のはっきりした出血領域が見られました。
胃や空調、大腸の粘膜には多くの点状出血が見られました。
舌の根元に喉頭まで広がる潰瘍がありました。喉頭蓋は赤く、著しく腫脹していました。
病理組織標本からわかること
心臓に大きな異常は見られません。
脾臓のリンパ濾胞は認められません。類洞では細網細胞の増殖が高度です。
まとめ
骨髄では造血細胞の減少がみられ、それによる出血傾向で、皮膚や消化管粘膜に点状出血がみられます。また、扁桃腺から咽頭の粘膜には壊死がみられ、舌や喉頭蓋には潰瘍が形成され、免疫力低下状態であったことが示唆されます。この骨髄の変化は放射線障害と思われます。しかし、骨髄の標本では幼若細胞が多くみられ、巨核球もみられることから、再生してきているところと思われます。
両肺では多巣性に出血性梗塞の所見を認めます。それ以外の部分にも急性うっ血水腫と出血を伴います。両肺の出血や梗塞、急性うっ血水腫などが直接的な死因と推測されます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24