No.A129
年齢 | 25 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/14 |
剖検年月日 | 1945/08/14 |
被爆距離 | 1500 m |
被爆時地名 | 基町(北方兵舎) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
北方兵舎の作業場(屋外)で被爆しました。
口と右肩甲部に0.5cmから1cmくらいの軽いやけどを負いました。
症状の経過
被爆後、はきけと嘔吐があり、下痢が頻回にありました。発熱がありました。尿蛋白が2(+)でした。
検査日は分かりませんが、白血球数は7500/μlでした。
当時の記録からわかること
体格は中等度で、栄養状態は良好でした。
かさぶたに覆われたII度のやけどが口と右肩にみられました。
左胸腔では下部に癒着が見られました。胸水の貯留はありませんでした。左肺下葉の上端に、米粒大の小さな石灰化結節がありました。右肺には結核病変はありませんでした。
胃粘膜にはいくつかの点状出血が認められました。小腸に6匹の回虫がいました。大腸では粘膜に多数の浅い潰瘍あるいはびらんがみられました。
骨髄は、どの部分かは不明ですが、黄色髄でした。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。以下は当時の記録にある組織所見です。
肺では、多くの肺胞は桃色に染まる物質で満たされていました。一部では小さな血管内にフィブリン様物質がみられました。
やけどの部分の皮膚では、上皮の多くは失われていました。表層部分には細菌塊がうめこまれていました。やけどの辺縁部分には大型のリンパ球がみられましたが、成熟白血球はみられませんでした。汗腺では上皮に空胞化がみられました。毛嚢のいくつかでは上皮にも壊死がみられました。
まとめ
組織標本は残っていないため、当時の記録から推測しました。
骨髄や肺に関する所見の記載が不十分であることから、病態を推測することがかなり困難です。
骨髄では脂肪髄との記載があり、皮膚のやけど部などで好中球浸潤が少ないとの記載から、骨髄では造血組織が萎縮していると考えられます。点状出血もありますが、それほど多くはありません。
左肺には石灰化巣があり、陳旧性結核病変と思われますが、活動性の炎症は生じていないと推測されます。肺には急性うっ血水腫があると推測されますが、死亡直前の変化と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31