No.A124
年齢 | 42 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/08/30 |
剖検年月日 | 1945/08/30 |
被爆距離 | 900 m |
被爆時地名 | 水主町(広島県庁) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
窓側にいた時に被爆しました。
倒壊した建物の下敷きとなり、ろっ骨を骨折しました。やけどはありませんでした。
症状の経過
8月22日に西条の傷痍軍人広島療養所に入院しました。歯茎に小出血がありました。出血時間は15分と著しく延長していました。
8月29日に状態が悪化。黄疸があり、皮下出血斑が出現し、翌30日に死亡しました。
8月22日から死亡日まで39℃から40℃以上の発熱が続きました。
8月22日の血液検査では白血球650/μlと低値であり、その後も26日370/μl、27日500/μl、28日260/μl、29日350/μlと低値が続きました。
当時の記録からわかること
当時の記録には骨髄の所見のみ記されています。
胸骨の骨髄はほとんど脂肪髄であり、わずかにリンパ球や形質細胞が見られました。巨核球や赤芽球はみられませんでした。一部には骨髄組織が認められる部分もありましたが、骨髄球が最も多く、成熟した白血球はみられませんでした。
病理組織標本からわかること
心臓の心筋細胞には核の多形化が認められます。
腎臓の糸球体に大きな異常はありません。遠位尿細管の一部で内腔に赤血球が見られます。
脾臓ではリンパ濾胞が萎縮しています。類洞内腔の拡張と細網細胞の増殖が認められます。
リンパ節ではリンパ球の密度が高く、細網細胞が増殖しています。
扁桃腺上皮は一部が壊死しています。
まとめ
骨髄はほとんど脂肪髄で、造血細胞は少なく、巨核球や有核赤血球はみられません。この所見は放射線障害と思われます。
標本からは直接的な死因と考えられる重大な病変は見出せません。骨髄機能が低下し白血球が減少していたこと、高熱が続いていたことなどから敗血症などが疑われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24