No.A123
年齢 | 52 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/17 |
剖検年月日 | 1945/09/17 |
被爆距離 | 900 m |
被爆時地名 | 不明 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
ワンピースを着て室内に座っている時に被爆しました。
やけどはなく、左足、左足背と腹部に裂傷を負いました。
症状の経過
裂傷はゆっくりと治ってゆきました。
9月1日に発熱、下痢が出現し、点状出血も見られました。下痢は9月15日まで続きました。
9月12日に出血を伴う歯肉炎がおこり、9月17日にはさらにひどくなりました。脱毛もありました。
当時の記録からわかること
全身に多数の点状出血や、ソラマメ大の出血がありました。歯肉には出血と膿が見られました。
両側の胸膜は癒着していました。左肺の上葉にはかたい石灰化した結核結節がありました。右肺の下葉では結核結節と思われる2~3㎝程度の硬結がありました。肺全体に強いうっ血が認められました。
胃には回虫が1匹いました。胃粘膜には多数の点状出血が見られました。大腸の粘膜にも点状出血がみられ、うっ血を伴っていました。
腎臓の表面や腎盂粘膜には多くの点状出血が見られました。
子宮筋層には2~3cm大の3個の平滑筋腫(いわゆる子宮筋腫)がありました。
病理組織標本からわかること
大動脈の内膜は軽度の肥厚が見られます。
肝臓では肝細胞が軽度萎縮しています。グリソン鞘の一部に軽度のリンパ球浸潤が認められます。
腎臓の遠位尿細管内には赤血球と尿円柱が見られます。
脾臓のリンパ濾胞は小型ですが見られます。類洞にも細胞成分が多く見られます。
扁桃腺の一部の上皮に壊死と剥脱が見られます。
まとめ
骨髄の標本は残っていないため確認はできませんが、皮膚や胃粘膜などの点状出血から、放射線による造血細胞の減少があると思われます。また、歯肉炎は免疫低下状態にあることを示唆します。
肺では左肺上葉に石灰化を伴う陳旧性結核を認め、両肺とも胸膜に癒着が見られます。さらに左肺下葉には出血や細菌感染を伴う壊死巣がみられ、急性気管支肺炎があります。
動脈硬化症や子宮筋腫などは加齢性変化と思われます。
急性気管支肺炎が直接の死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24