No.A122
年齢 | 51 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/11 |
剖検年月日 | 1945/09/11 |
被爆距離 | 1100 m |
被爆時地名 | 上流川町(NHK広島中央放送局) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋内で座った状態で被爆しました。着物を着ていました。
顔の右側に挫傷を負いました。やけどはありませんでした。
症状の経過
8月20日に脱毛、食欲不振と軽度の発熱がありました。
9月1日には嚥下痛、歯肉出血が出現し、体温はさらに上昇しました。鼻血と喀血もみられました。
点状出血は日に日に悪化しました。
当時の記録からわかること
皮膚は蒼白で、点状出血がいたるところにみられました。歯肉出血がありました。
左肺門には大きな膿瘍がありました。左肺下葉や右肺にはいくつかの灰色の結節がありました。
心臓の心外膜に小さな点状出血がありました。
胃の粘膜には多数の点状出血が見られました。小腸、大腸に大きな異常はありませんでした。
両側の扁桃腺は壊死しており、少し腫れていました。
大腿骨の骨髄は黄色から茶色でした。
病理組織標本からわかること
気管の粘膜上皮は壊死しています。粘膜下層に炎症細胞が浸潤しています。
肝臓の小葉中心部に軽度の類洞の拡張が見られます。
腎臓では一部の糸球体が硬化しています。
脾臓ではリンパ濾胞が見られません。脾髄の細胞密度は低下しています。
骨髄は脂肪髄です。細胞密度の高い部分は標本が厚く、分類はできません。
まとめ
骨髄では、放射線による造血細胞の減少が見られますが、再生の所見も認められます。しかし、全身皮膚などの出血や口内の壊死などからは、いまだ血小板や白血球の回復には至っていないことがうかがえます。
両肺では、広い範囲で急性気管支肺炎があり、急性うっ血水腫も伴っています。これらの肺の異常が直接的な死因になったと考えられます。
軽度の腎硬化症は加齢に伴う変化であり、放射線とは無関係と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/08/30