No.A120
年齢 | 22 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/06 |
剖検年月日 | 1945/09/07 |
被爆距離 | 1000 m |
被爆時地名 | 基町(中国第104部隊) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
兵舎内で被爆しました。やけども外傷もありませんでしたが、鼓膜が破れました。
症状の経過
鼓膜が破れ、中耳炎を起こしていました。
9月1日から鼻血がみられ、死亡時まで続きました。
9月2日に出血を伴った下痢が出現しました。
9月6日の出血時間は40分と著しく延長、赤血球数は306万/μl、白血球は350/μlとかなりの低値でした。
当時の記録からわかること
上腕、腹部、下肢に点状出血がみられました。歯肉では径0.5cm大の血種がありました。
横隔膜に3cm大の穿孔があり、胃の穿孔とつながっていました。左胸腔では、食物の粒が混在した250mlの血液状の液体が、右胸腔にも約100mlの暗赤色の混濁した液体がたまっていました。
胃の噴門部では、胃壁はかなり薄く、4cmの穿孔が見られました。
大腸の粘膜にはうっ血がありましたが、点状出血はありませんでした。
扁桃腺は両側とも腫大していました。
病理組織標本からわかること
肺には広く急性うっ血水腫が見られ、多巣性に肺胞内に滲出細胞が認められます。
精巣では精子が認められず、セルトリ細胞が増殖しています。
甲状腺の濾胞が小型化しています。
扁桃腺のリンパ組織は保たれています。

心筋細胞の核には軽度の大小不同が認められます。

リンパ濾胞は小型で、類洞にもリンパ球はあまり見られません。

過形成の部分が広く、特に巨核球が多数集まっている部分があります。
骨髄球系では、幼若な細胞以外に成熟した細胞もみられます。赤芽球の集まりもみられます。
まとめ
骨髄では、放射線の影響と思われる造血細胞の減少した脂肪髄の部分の他に、過形成を示す赤色髄の部分がみられ、再生してきている所見と思われます。過形成を示す部分では、骨髄球が主体で、成熟した細胞は少ないと判断されます。赤芽球も巨核球も見られますが、皮膚などの点状出血や歯肉の血種、また、鼻出血の記録などから依然出血しやすい状態であったと思われます。
一方、胃の噴門部に4cm大の穿孔がみられ、横隔膜の穿孔を併っており、両側胸腔に血性の胸水貯留を伴います。穿孔の原因は不明で、被爆との関連性は明らかではありませんが、この穿孔による腹膜および胸膜の炎症が直接的な死因になったと考えられます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/10/24