No.A119
年齢 | 17 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/02 |
剖検年月日 | 1945/09/02 |
被爆距離 | 1100 m |
被爆時地名 | 上流川町(広島女学院横) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
日本家屋の屋内で被爆しました。
症状の経過
被爆当日に、はきけと嘔吐があり、死亡日まで食欲不振が続きました。
8月20日頃より発熱と点状出血、脱毛が始まりました。
9月1日の検査では、赤血球は275万/μl、白血球は950/μlといずれも低値でした。
当時の記録からわかること
栄養状態は不良でした。皮膚には多数の点状出血がありました。
右肺と胸膜は癒着しており、10 mlの血性胸水がたまっていました。心のうの壁にはいくつかの点状出血がみられ、20mlの血性心のう水が貯留していました。
肺の左下葉では、境界のはっきりとした出血巣がありました。その他にも様々な大きさの出血巣が見られました。胸膜や心外膜に点状出血が見られました。
椎骨(背骨)の骨髄では赤色髄部分が著しく減少していました。
病理組織標本からわかること
腎臓の糸球体、尿細管上皮に大きな異常はありません。髄質のうっ血が著明です。
精巣では丈の高いセルトリ細胞が目立ちます。精細胞は減少しています。
脾臓では、小型ながらリンパ濾胞が認められます。
リンパ節の固有構造は保たれ、小型のリンパ濾胞が見られます。
扁桃腺の上皮は壊死しており、潰瘍が形成されています。
まとめ
骨髄では脂肪髄が広く、巨核球や赤芽球の減少が著明です。血小板減少により出血症状、白血球減少による感染しやすさのために口腔内及び咽頭の炎症が生じたと思われます。造血細胞の減少は放射線の影響と思われ、脾臓とリンパ節での濾胞の縮小や精子形成の低下と脱毛も放射線によると考えられます。
肺には出血に大きな細菌塊を伴う部分があります。病変部に好中球の浸潤は少なく、炎症反応が乏しいことも放射線の影響と考えます。この、急性出血性肺炎が直接の死因と思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31