No.A118
年齢 | 46 歳 |
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性別 | 女 |
死亡年月日 | 1945/09/01 |
剖検年月日 | 1945/09/01 |
被爆距離 | 1300 m |
被爆時地名 | 弥生町 |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
屋外で被爆しました。
頭、右手、背中の広範囲にII 度からIII 度のやけどを負いました。
症状の経過
被爆時から発熱と食欲不振がありました。
8月25日には脱毛と点状出血が出現しました。8月25日の白血球数は3500/μlでした。
当時の記録からわかること
点状出血が全身にみられましたが、新しいものや消えかけているものがありました。
左胸腔には混濁した出血性の胸水が約20ml認められました。
心外膜には少数の点状出血が見られました。心内膜下には少量の出血がありました。
左肺の下葉はかなりのうっ血を示していました。胸膜下には、まだらで不規則な出血が見られました。右肺の上葉にはいくつかのエンドウ豆大の出血がありました。
胃粘膜には古い点状出血がありました。十二指腸には2匹の回虫がいました。出血はありませんでした。
病理組織標本からわかること
肝臓の小葉中心性変性は軽度で、死後変化との区別が困難です。
腎臓の遠位尿細管に尿円柱の形成が認められます。
子宮には大きな異常はありません。
卵巣には白体のみが見られ、卵胞はみえません。
まとめ
放射線の影響と考えられる、骨髄での造血細胞の減少が顕著です。巨核球の減少と小型化により血小板が減少していることが推測され、皮膚や心外膜などに広く点状出血を認めます。骨髄球系の成熟細胞も減少していますが、両肺には気管支肺炎の所見はなく、感染巣は目立ちません。
死因として明確にとりあげられる病変は見出せませんが、腎の遠位尿細管に尿円柱の形成がみられ、急性腎不全状態であったことが推測されます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/01/31