No.A116
年齢 | 38 歳 |
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性別 | 男 |
死亡年月日 | 1945/09/08 |
剖検年月日 | 1945/09/08 |
被爆距離 | 1500 m |
被爆時地名 | 稲荷町(電停付近) |
出典:国土地理院の空中写真(1945-1950撮影)を加工して掲載
被爆状況
横川駅より広島駅へ向かう電車の中で被爆しました。ガラスの破片で左頬を負傷し、左耳の後ろにやけどを負いました。
症状の経過
8月28日の血液検査では白血球数2900/μl、赤血球数400万/μlでした。
9月1日歯肉出血が出現しなかなか止まりませんでした。
9月2日より発熱と咽頭痛があり、9月4日に入院しました。入院時の血液検査では赤血球数は420万/μlと変わりありませんでしたが、白血球は800/μl、血小板は1万以下にまで減少していました。
40℃以上の発熱が続き、咽頭痛が強く眠れないほどでした。
当時の記録からわかること
体中の皮膚に点状出血がありました。口腔内には広範囲に壊死がありました。扁桃腺には深い潰瘍ができていました。
両肺の表面には点状出血点があり、肺の大部分は水腫様でした。
食道にはところどころに小さな潰瘍が数個ありました。胃全体に一様に多数の点状出血がありましたが潰瘍はありませんでした。
小腸、大腸では点状~小斑状出血が見られました。回虫が2匹いました。
病理組織標本からわかること
標本は残っていません。当時の記録には以下の記載がありますが、あまり多くは書かれていません。
大腿骨の骨髄はほとんどすべて黄色髄でした。顆粒球や赤芽球は見られませんでした。
脾臓の濾胞は委縮していました。リンパ球は減少していました。
まとめ
骨髄は著しい低形成であり、造血細胞は減少していました。血小板の減少による出血しやすい状態があり、全身の皮膚、肺、胃粘膜などに点状出血がみられました。免疫力低下状態であったと思われ、口腔内には壊死や潰瘍が認められます。骨髄の変化や、脾臓の萎縮は放射線の影響と思われます。
両肺には広範囲の急性うっ血水腫とともに、下葉には急性気管支肺炎があると推測されます。
高熱が続いていたことなどから、肺炎と急性うっ血水腫が直接の死因になったと思われます。
- 作成日
- 最終更新日
- 2022/02/28